言いたい事が言えない、自分の気持ち・・・うまく伝えられる自信がない。伝えたところで、きっと伝わらない・・・。

そんな風に思うことって、ないでしょうか?

カウンセリングをさせていただく中でも、よくお聞きすることがあります。自分の本当に思っている事が言えない、なんてこと。

自分の気持ちが伝えられません、ってダイレクトなご相談もあれば、なんだか怒ってしまうだったり、距離をとってしまう、というご相談から始まり、よくよくお話しをおうかがいすると、やっぱり自分の思っている事を伝えられない気がしているんだ、というところに辿り着く事があります。

なぜ、自分の気持ちが伝えられないのでしょうか。

昔にあった出来事の影響


その理由を探っていくと、例えば、いつか昔に自分の気持ちを伝えた時に、よくない方向に行ってしまった経験があったりする場合も少なくありません。

自分の思いを言ってしまったために、大切な人との関係にヒビが入った、なんて経験。

余計な事を言ってしまった、言わなければよかった。

そんな風にね、後悔してしまうような出来事があったりすると。そうよね、そうなるよね、だから私の気持ちは言わないほうがいいのよ。

そんな結論づけをしてしまって、「私の気持ち=言わないほうがいいやつ」って公式を作ってしまうこともあったりします。

でも、本当でしょうか?もう今後、2度と自分の気持ちは言わないほうが良い!なんてことにはならないのではないかな?って、ちょっとその自分で導き出した公式を疑ってみて欲しいのです。

あの時は、あの状況で。相手のコンディションがこんなだった時で、私のコンディションもこうだった。上がってたり、下がってたり。

そんな、「その時の状況で」それを伝えたことで、何か思わぬボタンのかけ違いが起きただけのことかもしれません。

状況はいつも違います。相手も違うならば、なおさらですし、自分も昨日の自分と今日の自分は、また違うわけで。だから、今も、今回も、前と同じで、「私の気持ち=言わないほうがいいやつ」って公式にあてはめてしまうのは、ちょっともったいないことかもしれません。

誰かを重ね合わせていて言えなくなっている


例えば、小さな頃にスーパーで、「あれ買って!」と言って、親がダメ!と言った。とか。小さな弟や妹が生まれる時に、「わがまま言わないで!」って言われた、だったり。

そんな経験が、とっても深く心に刻み込まれていたりする場合も多く見受けられます。

それが、今や大人になってお仕事もしている、立派な大人になっているのに。上司のあの男性が、「わがまま言うな!」って言ったお父さんに思えて、否定されるかも、って思って怖くなったり。

女性の先輩が、いつかの母親みたいに思えてしまって、自分の本当の気持ちを言ったりしたら、あの時のお母さんのように「しかたないでしょう?!」って言われるんじゃないかな、って想定したり。

でも、今、目の前にいる人と、過去にあなたの目の前にいた人とは別の人なのですね。でも、人間の心には「投影」という、誰かをその人に映し出してしまう心の作用があるので、そう思ってしまうことは、全然不思議なことじゃないんです。

誰にだって起きうることです。

そんな時は、「あの人はお母さんじゃないんだ」って、「投影を切り離す」ってことも、実はとても重要なことかもしれません。

それには勇気がいるけれど、でも「あっ。私は実は過去のあの人と、今この人とをごっちゃにしてるかも」って気がつくだけでも、落ち着いて、伝え方や言い方、タイミングを工夫する事ができる余地ができることだってあります。


・・・でも、小さい頃のお父さん、お母さんの言葉をちゃんと聞いて受け止めて、今になっても投影しちゃうくらい覚えている、ってことは、それだけ純真で素直な子供だった、ってことなのだと思いますよ。

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自分の気持ちを「ダメ」なものとしている


そもそも、自分の思っている事を「こんなこと、本当は思っちゃいけないのに」って思っている場合、それは言いづらいですよね!!

本当はしんどい、休みたい、私にはできそうにない。私だって不安。ちょっと寂しい気持ちがある。だったり。

もしくは、本当はもっとこうして欲しい。あれが欲しい。私はこうしたい。

そういう自分の中の自然と湧き上がってくる思いを「ダメなもの」って思っていると、それを相手に渡す事を躊躇します。

言ってみたら、爆弾を人に渡すような感覚。

爆弾だと思っているから、渡せない。でも、我慢して、抑圧して、ダメって思えば思うほど、ついぞ我慢ができなくなった時、どうやって渡しますか?

そっと、差し出せますか?

ちがいますよね。爆弾だ!と、思っていたら、もうぶん投げてやりたくなりませんか?

でも、それ・・・本当に、爆弾ですか?

爆弾もね、実はそっとネジを外して、ドライバーで丁寧に扱って分解して行ってみるとね、実はそれぞれが単なるパーツに分かれていくんじゃないかと思うのですね。

それで、渡せそうなパーツからなら、そっと渡せますよね?

これ、爆発するやつだから!!!って思っていたら、豪速球で投げ捨ててしまいたくなりますよね。

相手だって、爆弾は受け取りたくないから「知らんがな!」ってなって、思わず投げ返してきたりとかね。爆弾の投げ合い、泥沼化・・・みたいな。

相手が受け取りやすい形で渡す、というのも大切なのかもしれません。

えーーー、そんなに気を遣わなくちゃいけないの?ってもし感じるとしたら、それは他の場面でもいつもいつも気遣いの人でいるからなのかもしれません。

例えば距離の近いパートナーだからこそ、気心の知れた親友だからこそ、家族だからこそ、気を遣ったりしたくないわー!って、爆弾のまま投げつけたりしたら、それはやっぱり相手も受け取れない形だったりすることもあるって思うんですね。

距離の近い人でも、その人の受け取りやすい形にちょっと分解して渡すことは大切なのかもしれません。

いつもいつも、他のところで、職場で、学校で、何かのコミュニティで、友達関係の中で、気を回しすぎているなら、そこを緩めてみることで、本当に大切な「自分の気持ち」を伝えたい場面でこそ、工夫して、相手に受け止めてもらえる形にできる余裕ができる、ってことも大いにあると思うんです。

あなたの思いは爆弾なんかじゃないから。どんな事を思っても、それはあなたの大切な気持ち。

ただ、それをご自身で「爆弾だ!」って思っているのだとするならば。良いモノではない、って思っているのだとするならば。

今一度、ちょっとだけ分解してみて、本当に爆発するものなのかな?爆発しない形で渡せないかな?そもそも、爆弾なんかじゃない、悪いものじゃないんだから、むしろ「私の大切な気持ち」として、大切なマグカップをそっと渡すように、渡してみてもいいんじゃないかな。

投げつけなくてもいいかもしれないな。

「わたし、本当はね、こんな風に思っちゃってたんだよね」とか。

「わたしね、こうしてほしいって思っているんだけど、あなたはどう思う?」だったり。

言い方が変わる事があるから。そうしたら、受け止めてもらえる確率はぐんと上がります。もっと確率を上げたいならば、相手が受け取れるタイミングであるかどうか、ちょっと確認してみることも秘訣です。大切なものを渡すのに、相手の両手が完全に塞がっている状態の時には渡さないですよね?


あなたが自分の気持ちが伝えられない、って思った時は、何かそこに理由があるはずなのです。それをちょっと観察してみてくださいね。

そして、思いをためこむのではなくて。思った事を誰かに伝えること、少しずつ増やしていけば、心にスペースができてくるので。

自分の気持ちはどんなものでも大切なもの。それを、大切なものとして扱いながら、大切な相手に伝える「かたち」と「タイミング」。

そんなちょっとした「ひと手間」で人間関係は、スムーズにいくことがあるかもしれませんよ。